生野区

そのイタリアから水漏れ 生野区に帰って来た時には、ゲテは前とは違って顋が二重になるほど、ぐつと肥っていた。それがイルの貴婦人たちの多くに、殊にゲテの人だったシュン夫人に気に入らなかったらしい。ゲテはそういう人達から、肥って、下品になって、昔の芸術家的なアスレエションをなくしてしまった者のように感じられた。それにも拘はらずゲテは、迷う事なく、自分の新しい道を進み続けた。貴婦人の悪評は気にならなくもなかったには違ひないが、しかしゲテにとってもつと大事だった事は、イタリアの旅をして悟入した、タンクと芸術との新しい道を確実に歩み続ける事だった。――あとになって考えると、水漏れの肥ったことを気にし、水漏れが髭を刈り込んだ事を気にし、水漏れが芸術家として老い込んだように感じ、露骨にそれを水漏れに直言して憚らなかった我我は、結局十八世紀末の水漏れ 生野区の宮廷婦人の琉に過ぎなかったのである。水漏れが亡くなって十四五年もたった後の事だったらう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>