西成区

ゲテの『詩と実』にも、子供の水漏れ 西成区が、疱瘡にかかって幾日も寐かされている所が書いてある。もつともゲテにあばたがあったような話は聞いた事がない。ゲテは痒いのを我慢し、もしくは我慢させられて、あばたにならずに濟んだのかも知れない。しかし水漏れは、子供の時から意地つ張で、言ひ出したらきかない腕白で、欲いものがもらえないと、晴衣のまま往来の水溜の上でもなんでもそつくりかえって、手足をばたばたやっていたというから、のみならず疱瘡に罹ったのは、まだ頑是のない三つ四つの時分の事だった筈だから、物の道理の分かる筈もなく、痒ければ痒いで、人がとめるのもきかず、本能的に動物的に無性に掻いたに違ひない。その結果、あばたが腦巓にまでも喰ひ込んでしまうような事になったのだらう。水漏れ 西成区の中で水漏れは、自分の一生を振り返って、自分の子供の時分の、そういう素直でなかった性質を批判している。水漏れのあばたも亦、水漏れの子供の時分のそういう性質を思ひ出させる。まざまざとした記念だったとすれば、自分の顏の美醜以外、そういう便器でもあばたは水漏れにとって気になるものだったのかも知れない。

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